次の状況を思い浮かべてください。時は2017年1月5日。仕事始めのこの日、年末年始の休みを終えた人々がそれぞれの職場に戻ってきました。そこに「ECM終焉」のニュースが飛び込んできて、山火事のごとく広がり始めます。

最初はほとんどの人がこれを冗談(今風に言えば「フェイクニュース」)だと思っていましたが、Gartnerがニュースの発信元だとわかり、現実味を帯びてきたのです。なんということでしょう。

ニュースが浸透するにつれ、自分にとって大切な誰かを亡くしたときに多くの人が経験する、信じられないという気持ちや悲嘆、怒り、否認といったさまざまな感情がECMコミュニティに広がり始めました。

氏名不詳のある業界専門家は、このニュースを聞いたとき次のように感じたと言います。「ECMが終焉を迎えただなんて、誰がそんなことを言っているのでしょうか?私はECMで20年のキャリアを積んできました。そもそも2012年から『ECMの終焉』を話題として取り上げてきたのは[私たち]ですが、常にその論拠となる『理由』を示してきました。それが今回は何の説明もありません。」

Deep Analysis GroupのAlan Pelz-Sharpe氏の感じ方は、これより多少実際的でした。「Gartnerが大騒ぎを起こして業界に揺さぶりをかけたがっているのだと、最初のブログの記事を読んだときにわかりました。その動機は理解できますが、Gartnerの意図を理解できなかった人もいると思います。実際、GartnerはECMという用語を消滅させたいと明言したのです。」

ECM業界にとって、2017年が幸先の良いスタートを切ったと言っても過言ではない状況において、Gartnerはなぜ、10年以上も使われてきた用語を消滅させる必要があると感じたのでしょうか?そしてECMコミュニティはなぜ、あれほど感情的に反応したのでしょうか?この2つの質問の答えを見つけるには、時間をさかのぼって考えてみる必要があります。

ECMとは何か?

このブログを読んでいる皆さんはおそらく、エンタープライズコンテンツ管理、つまりECMという用語を耳にしたことがあるでしょう。2000年代初めにAIIMによって考案されたECMという造語は、80年代から90年代にかけて広く使われていた「文書管理」という用語から自然に発展したものです。

AIIMはECMのことを「組織のプロセスに関連したコンテンツと文書を収集、管理、格納、維持、配布するために使用される戦略、方法、ツール」と定義しています。

Pelz-Sharpe氏はさらに次のように述べています。「[ECMは]レコード管理からワークフロー、ライブラリサービス、文書出力にいたるまでのコンテンツサービスプラットフォームを意味する、2000年代はじめの用語です。このプラットフォームの機能をすべて使ったことのある人はほとんどいませんが、用語自体は定着しています。」

ここでの問題は、用語が業界内で定着した一方で、実は、ビジネスの世界で多くの人の共感を得ることはありませんでした。ECMは、ビジネスユーザーが組織の情報や文書を処理する目的に完全には適ったものとは言えませんでした。

SimflofyMarko Sillanpaa氏は、このことに次のように同調しています。「ECMはその存在を知っている人の間でしか、用語として理解されていなかったように思います。たとえば、AIIMが2016年に主催したWorld Paper Free Dayイベントの『ヒーロー』企業は、2017年のAIIMコンファレンスに出席するまでこの用語を耳にしたこともなかったと述べています。」

とは言っても、人々がこの用語の意味を知っているかどうかにかかわらず、エンタープライズ環境全体でコンテンツを管理する方法を言い表す何かが必要であったことに変わりはありません。そこで(後にGartnerによって廃止されることになる)ECMという用語が生まれたのです。

王を殺したのは誰か?

e-Wave SolutionsChris Walker氏は次のような意見を述べています。「[ECMとは]テクノロジーや方法論、プロセスなどではなく、適切な情報を適切なオーディエンスに、適切なコンテキストとタイミングで届けることを目的とした考え方または枠組みのことであり、情報を収集、管理、格納、維持、配布することを[可能にする]ツールとプロセスでサポートされています。」

Sillanpaa氏は次のように付け加えています。「組織は何らかの目的のために文書を管理していますが、ECMベンダーはこの点を見落としていたと私は思います。90年代に最終ソリューションであったコンテンツ管理は、もはや最終ソリューションではなく、より大きなソリューションの一部となったのです。」

また、ECMソリューションが一本化されていなかったという事情もあります。ほとんどの組織が複数のECMソリューションを使用し、1部門あたり1ソリューションが導入されているケースもめずらしくありませんでした。これらの多様なソリューションは完全に分離されていることが多く、ソリューション間の接続もなければ、共通の言語や構造(正しい用語を使うと、タクソノミー(分類法))も確立されておらず、ソリューションごとに機能レベルのばらつきもありました。そのため、IT部門による管理が非常に困難になるだけでなく、ECMソリューションの主要セールスポイントの一つである、SVOT(唯一の真実)を手に入れることも事実上不可能になります。

そこで形成され始めたのが、主人ではなく従者になるという新しいコンセプトです。ソフトウェアベンダーとエンタープライズソリューションが連携し合うこの世界では、参加者一人ひとりがパズル全体を完成させるのではなく、パズルピースを一つずつ出し合います。

このコンセプトは、単独プレーに慣れた、この業界の多くのレガシーベンダーにとってなじみ深い考え方ではありません。Sillanpaa氏は皮肉を込めて次のように述べています。「業界全体がユーティリティになるのを見るのはやや屈辱的なことです。」

しかし、この業界再編は必要なことかもしれません。

ECMという用語とそれに関連付けられた市場が、CRMソリューションやERPソリューションと同じレベルに達したことは一度もありませんでした。これらのタイプのアプリケーションはいずれも、エンドユーザーの言葉を使い、特定のビジネス目的に的確に適合しています。一方のECMは、独自の言語、プロプライエタリな情報ストア、往々にして質の低いユーザーインタフェースという問題を常に抱え、それ自体がより大きな組織的ソリューションエコシステムの一部であるという認識に立つことはありませんでした。

新しい王の到来

今後は業界の再編よりも、古い王を殺して、コンテンツサービスという新しい王に後継させることに重点がシフトするとGartnerが考えていることは明白です(まさにテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界です)。

コンテンツサービスという用語は、ECMよりも包括的であり、EFSSツールやコンテンツフェデレーション/移行サービス(抽出・変換加工・ロードを意味するETLとも呼ばれる)のほか、収集、分類、ワークフロー、文書管理などの標準ECMテクノロジーなど、幅広いテクノロジーを網羅しています。

コンテンツサービスへのシフトは、大変革というよりも進化・発展として多くの人にとらえられています。Pelz-Sharpe氏は次のように述べています。「私たちは、コンテンツサービスという用語の誕生を目の当たりにしましたが、これらのサービスの多くはすでにずいぶん前から存在しており、今後数年間でさらに多くのサービスが市場に投入される見込みです。その意味で、多数のテクノロジーを網羅する、この進化・発展は起こるべくして起こったことであると言えます。(コンテンツサービスという用語を使用しているかどうかは別にして)コンテンツサービスをこれまで何年間も購入してきたバイヤーが主導した流れです。」

ただし、自然の成り行きであるこの進化・発展には、新しいタイプのソリューションに固有の要件が伴います。

まず、コンテンツ指揮者を一人に絞った、プラットフォームアプローチが必要です。この指揮者は、コンテンツがどこにあり、どのようなコンテンツであり、誰がアクセスでき、どのように共有すべきかを把握している必要があるという意味で、オーケストラの指揮者とよく似ています。

オーケストラの指揮者自身は、世界クラスのピアノ演奏者ではなく、バイオリン奏者でも、打楽器奏者でもありません。指揮者に求められるスキルとは、指揮を執る能力、つまり、どのようなリソースが利用可能で、それをどのように管理し、どのように連携させれば、エンドユーザーに製品を提供できるようになるかを把握できることです。オーケストラが本領を発揮できるためには、腕のいい楽団員が揃っているだけでなく、演奏する曲目に必要な楽団員が揃っていることも必要です。ホルン奏者がいない楽団がホルン協奏曲を演奏しようとしても仕方ありません。

このことは、最新コンテンツサービスプラットフォームの主要機能でもあります。企業が特定のタスクに必要とするツールは企業全体に分散し、これらのツールに含まれるコンテンツ、プロセス、ユーザーインタフェースも既存の多数のシステムにまたがっている可能性があります。コンテンツサービスプラットフォームは、これらの分散した要素をまとめて、コンテンツのオーケストラを指揮することによって、クレーム管理や従業員オンボーディング、契約管理など、企業に必要なタスクを実行できることが必要です。

Chris Walker氏が述べるとおり、「ECMスイートとプラットフォームは、実際的なビジネスソリューションを提供する個々のツールになりつつあります。」

ECMは死滅したのか?

Pelz-Sharpe氏は興味深い見方を示しています。「市場を定義しているのは、アナリストではなくバイヤーであるということを、痛い目にあった経験から学びました。ECMの市場規模はいまだに30億ドルレベルであり、決して死滅したわけではありません。」

Gartnerが間違って見当違いなことを言ったのでしょうか?市場の反応を試していただけなのでしょうか?
明らかなのは以下の点です。

  • ビジネス環境におけるECMの位置付けが、ワンマンバンドではなくオーケストラの一員へと変化しています。Walker氏は次のように述べています。「自分たちが作る製品が、インフラストラクチャのようにバックグラウンドで使われるのに適しているという認識がベンダー間で広がっています。ECM製品の価値とは、コンテンツを必要としているユーザーとシステムにコンテンツを提供することにあります。」
  • 従来のレガシーECMプロバイダーは、早急に変革を進めなければ、この新しい世界で苦戦を強いられることになります。

プラットフォームベースでリポジトリに依存しない、コネクテッドコンテンツサービスソリューションは、SMAC(ソーシャル、モバイル、分析、クラウド)スタック以前に作成されたソリューションでは実現できません。多くのECMソリューションは10年以上前から存在しており、それよりも新しいソリューションに対抗するためには、大幅な刷新を図ることが必要です。

それに加え、企業内で管理する必要のあるコンテンツと情報の量は飛躍的に増加しており、数十億個の文書や操作(ユーザーまたはマシン)に対応できるスケーラビリティをコンテンツサービスプラットフォームの主要条件の一つに含める必要があります。今後、コンテンツサービスの提供を検討している組織の注目を集めるのは、拡張性に優れたクラウドインフラストラクチャと関連テクノロジー(柔軟性の高い検索機能など)を提供しているベンダーです。

2018年 - 1年後の展望

2018年が間近に迫り、ECMの死滅が正式に発表されてからほぼ12か月が経とうとしている今、データ、情報、コンテンツ、人、プロセスを何かによってつなぎ合わせる要求は依然として変わることなく強いのです。

情報を管理する必要性はまだあり、それは今後も変わりません。この連続したサイクルのことを、NuxeoのChris McLaughlinは「変化し、進化するのが技術の性質である」と述べています。分散型データセットの重要性の増大、クラウドベースのスケーラビリティとリソースアクセス、自動化と人工知能の使用範囲の拡大などを背景に、コンテンツの管理方法は多少変わる可能性があります。しかし、効果的で安全かつ容易にコンテンツを管理する必要性が組織内に存在することは、変わることのない基本的な事実です。

2018年は極めて重要な年になるでしょう。

最新のコンテンツサービスプラットフォームを提供するベンダーが、機能、接続性、価格、使いやすさの点でレガシーECMプロバイダーを追い抜く事態は、今後定期的に見られるようになります。GartnerはこのことをMQレポートの中で指摘しており、他のアナリストもこの考えに同調しています。それよりもさらに重要なのは、この考えに市場が反応していることです。コストのかかるシステム移行や再訓練、多額のメンテナンスコストを必要とせずに、実際のビジネス問題を解決できるソリューションは大変魅力的です。

コンテンツサービスは、ECMの失敗を取り消すことができるでしょうか?直感的でわかりやすいコネクテッド形式の情報管理が主流化するレベルについに到達したのでしょうか?その答えは時が経たないとわかりませんが、このレベルに達した可能性があると私は思います。