どんな組織にも、誰からも気付いてもらえず一度たりとも考られることのない、見落とされた情報が存在するものです。それは画像のアーカイブや文書管理リポジトリに閉じ込められている情報のこともあれば、ERPシステムに収められたデータのこともあるでしょう。はたまたワークフローのコラボレーションプラットフォームや事業部門ごとのデータベースなど、挙げればきりがありません。これらのリポジトリには、社会保障番号、財務記録、医療記録、住所、電話番号などが保管されているにもかかわらず、見落とされているか目につかないところに隠れている可能性があります。管理しなければならない情報の量、速度、種類がかつてないペースで増えているのですから、無理もありません。こうした情報は、機微情報やプライベートなデータを盗もうとするハッカーにとって「宝の山」のようになってしまう可能性があります。

では、どうすればよいのでしょうか。ひとつお勧めできるのが、人工知能(AI)をサイバー盗難防止に役立てることです。この点について、Nuxeoの製品マーケティング担当バイスプレジデント、David Jones氏と最近話す機会がありました。DaveはAIIM (Association for Intelligent Information Management) Internationalの理事も務めていて、デジタルトランスフォーメーションのシステムと戦略の専門家です。AIのイノベーションについて、またそれをサイバーセキュリティの課題にどう役立てられるかについて聞きました。

ここまでは、ヘルプデスク業務などの日々のプロセスにAIを役立てたり、ビジネスインテリジェンスの未来的な用途に使用したりすることについて、お話しいただきました。でも、Daveさんは、AIがサイバー窃盗対策としても有効なツールになるとおっしゃっていますね。

会社のデータや個人の特定が可能な情報を保護するという点では、「自分が何を知らないかを知る」ことが重要です。つまり、自社がどのようなコンテンツを抱えているかです。そのコンテンツに何が含まれているか、どこに保管されているかということです。

Nuxeoでは、複数のレイヤーで機能するAIのフレームワークを開発しました。エンタープライズコンテンツを複数のステップで精査します。最初は画像やコンテンツを管理するリポジトリの構造化データと文書、次にビジネスシステム内の非構造化データ、そして画像、音声、動画へと進みます。コンテンツのなかには情報ガバナンスと保管のポリシーで厳密に管理されているものもありますが、たいていのコンテンツはその対象外です。こうしたコンテンツが具体的に何なのか、どんな情報を含んでいるのか、会社にとってどのようなリスクになり得るのかを把握するのは、不可能ではないものの、きわめて難しいことです。弊社のシステムは、これを掘り下げて、リスクとエクスポージャーという観点からエンタープライズコンテンツに対する高度な理解をもたらします。

どのように機能するのですか。具体的なモデルを示していただけますか。

一例として、このようなコンテンツディスカバリーのプロセスでは、まず最初に全社的に存在するドキュメントのタイプを分類します。どんなタイプで、どこにあるのかです。次に、このモデルに別のレイヤーを追加し、最初のレイヤーからの結果を理解して理論的な判断を下せるようにします。さらにこの上にもうひとつレイヤーを追加して、複数のレイヤーの積み重ねを構築していきます。レイヤー上部の末端は互いに異なっていても、すべてが同じ核心部の理解から来ていることになります。「レイヤーアップ」で発見していく仕組みです。

大規模なデータ漏洩のケースが毎週のように取り沙汰されているように感じられます。被害者のなかには世界で最も技術的に進んだ会社も含まれています。AIはどのように役に立つのでしょうか。

専門家によると、今や問題は、ハッカーの被害に遭うかどうかではなく、いつ被害に遭うかです。4社に1社が今年中にデータ漏洩を起こすと予想されています。

AIは、サイバー盗難と闘う重要なツールをもたらします。が、その結果を受けて、企業がどのようなポリシーを導入するかが重要です。

例えば、収集するデータを増やすことが必ずしも良いこととは言えません。もはや価値をもたらさず、会社にとってリスクとなりかねないデータを、時には破棄する必要があります。AIは、どんな情報があるか、何が含まれていて、どこに保管されているかを把握するうえで有効です。これらを把握すれば、より思慮深い戦略的な意思決定を行い、重要なコンテンツを保管し、古くなったコンテンツや重複しているコンテンツを破棄し、適切な情報ガバナンスのために測定すべき項目や実践すべきプラクティスを決められるようになります。

この記事は、Nuxeoの製品マーケティング担当バイスプレジデント、David Jones氏へのインタビューをまとめた3回シリーズの最終回です。過去2回のブログは以下をご覧ください。

Kevin Craine

Kevin Craine氏は、ビジネス専門ライター兼技術アナリストであり、定評あるポッドキャストのプロデューサーとしても知られています。Twitterで影響力を発揮するエンタープライズコンテンツ管理業界のナンバー1インフルエンサーに選ばれたことがあり、また世界中に同氏のリスナーやリーダーがいます。詳細はCraineGroup.comをご覧ください。
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