デジタルアセット管理(DAM)ソフトウェアにとって、「未来対応」とは何を意味するのでしょうか。20年後のDAMは、どんなツールになっているのでしょうか。

デジタルアセット管理の未来を見通すことは、誰にもできません。でも、そのヒントを探すのであれば、過去に目を向けるのが一番です。これまでに世界がどれだけ変化してきたかを見てみましょう。

シートベルトは締めていただけましたか? それでは、Nuxeoタイムマシンに乗って1998年へ向かいましょう。

20年前のデジタルワールド

1998年の世界について、まずはおさらいです。携帯電話はこんな感じでした。

Nokia製の古い携帯電話

でも、たいていの通話には、これらの携帯を使わなかったはずです。長距離通話料とローミング料(覚えていますか?)が、1分当たりの通話料をとんでもなく高価にする可能性があったからです。「お得」とされるプランでも、月600分で90ドルの料金にのぼっていました。もちろん、通話が途中で切れることもしょっちゅう。「Can you hear me now?(聞こえる?)」という、あの有名なキャッチフレーズが登場したのは、4年後のことでした。

まったく新しいMacが登場して話題を独占したのも、この年。その後何年にもわたってクリエイティブに携わる人たちを虜にしたマシン、1,300ドルの「iMac」は、233MHzのG3プロセッサに4GBのハードドライブ、32MBのRAM、CD-ROMドライブ1個というスペックでした。

古いMac

大ヒット長寿番組『サインフェルド』の最終回は、ブラウン管のテレビでご覧になったはずです。最大解像度は720×480ピクセルでした。最新のデジタルカメラを持っていれば、1024×768ピクセルの自画像写真を撮れたかもしれませんが、まだ「自撮り」とは呼ばれていませんでした。それを誰かに見せようと思ったら、FacebookではなくAOLのチャットルームにアップロードしなければなりませんでした。

写真のアップロードに時間がかかることは言うまもでもなく、それを見てくれる人も限られていたものです。過去1年以内にオンラインを利用したという米国の成人はわずか41%でした。ほとんどの人は、56kのモデムでウェブにアクセスしていて、ウェブを見ている間は電話回線が「話し中」になったのです。最大384Kbpsという速度のブロードバンド接続は、真のテック系と環境を整えている企業が使っていました。

「ワールド・ワイド・ウェブ」で何かを検索する手段は、かなり限られていました。Yahooが提供しているディレクトリは、カテゴリとサブカテゴリをたどっていくことで、インターネットをファイルシステムのようにナビゲートする方式でした。検索エンジンとしてはAltavistaがベストでしたが、検索結果が返ってくるまでに数秒かかりました。Googleはかろうじて稼動していましたが、あなたの周りの最強のオタクでも、少なくとも翌年までその存在を知らなかったはずです。

1998年のDAM:困難と希望

20年前の企業は、急速に進化するデジタル世界という新しい課題に直面していました。

かつてない量の情報が、デジタル的に記録されるようになっていました。でも、その情報をどうやって保管し、管理し、アクセスすれば良いのか。DAMの導入を成功させるために、どのような組織上の課題を克服する必要があるのか。そもそも、この技術にどんな未来があるのか――。

1998年3月23日、アーカイブの専門家やリサーチャー、マーケッター、弁護士、そしてテック業界のエグゼクティブが、カリフォルニア州マリナデルレイのリッツカールトン・ホテルに集合し、知られ得るかぎり初のDAMコンファレンスを開きました。

ワールド・ワイド・ウェブの夜明けからわずか数年後の当時ですから、デジタルアセット管理技術もヨチヨチ歩きです。でも、この会議のプログラムを見ると、「知的財産権」や「クリエイティブなプロセスにおけるアセット表現」といったタイトルが並んでいて、今日の課題やユースケースが20年前にすでに議論されていた[(https://web.archive.org/web/20010122014900/http://www.annenberg.edu:80/DAM/1998/dam98_1b_transcript.html)ことが分かります。

エンタメ業界のエグゼクティブが、権利管理という頭痛のたねを解消するうえでDAMがもたらす潜在性についてプレゼンしました。肖像が許可なく使用された場合に映画製作スタジオにもたらすリスクを抑制する、あるいはクリップの使用許可の確認にかかる時間を短縮するといったメリットが話し合われたのです。 Sun Microsystemsのパネリスト、Bill Rosenblatt氏が、DAMにワークフロー管理を統合する必要があると語りました。また、QuarkXPressやAdobe Illustratorなどのクリエイティブ系アプリケーションとの統合の必要性も訴えました。さらには、エンタープライズ級のDAM製品と目的限定のソリューションが分かれていくこと、ウェブ専用のコンテンツ管理に潜在市場があることも予言しました。
テック会社のCEO、Sandeep Divekar氏は、デジタルアセット管理技術が可能にする未来の姿を描きました。オンラインで決済する、イベントのチケットを購入する前に座席からの見え具合を確認する、IKEAの家具に付いてくるマニュアルを見ても組み立て方がよく分からない場合にビデオを見る、などです。聴衆はこれらのアイデアを「半信半疑」で聞いていたと、同氏は表現していました。 Bulldog GroupのRandy Anderson氏は、アセットを複数の場所に保存してすばやく取り出せるようにすること、さらにデジタルアセットのサイズが大型化してスケーラビリティが必要になることを指摘しました。「デジタルフォーマットが普及するにつれ、その成長率は、たいていの人が予想する速度の最低4、5倍になるでしょう」と言ったのです。

個別には変化した点もあるかもしれませんが、これらの問題とソリューションは、今日のほとんどのDAMユーザにとってお馴染みでしょう。1998年当時ですら、DAMベンダーは、情報が物理的な国境を越えて今まで以上にアクセシブルになることで何が起きるか(その可能性)を理解し始めていたのです。

未来のデジタルアセット管理を予想する

南カリフォルニア大学アネンバーグ大学院が主催したこの1998年のDAMコンファレンスの様子は、DAM市場が黎明期でありながら、20世紀の技術機能をはるかに超える問題点をとらえようとしていたことを物語っています。

今ではDAM市場ははるかに成熟しましたが、今日のあらゆる業界の企業が感じているペインポイントの多くは、基本的に当時と同じです。整理されていないコンテンツ、事業価値をもたらしたであろうデータに対する可視性の欠如、コンテンツを再使用して効率を最大限に高める必要性などです。

過去20年の間に私たちの生活のあらゆる側面で多大な技術進歩が起こってきたにもかかわらず、世界初のDAM会議で語られた問題点の多くが20年後も解決されていないとは、いったいどういうことなのでしょうか。それは、10年以上前に構築されたソリューションは、レガシーアーキテクチャの上に構築されていて、スケーラビリティに限界があったからです。このため、大きなファイルや大量のファイルを扱うとなると、スピードやパフォーマンスの問題が生じました。そのうえ、メタデータが複雑化し、レガシーシステムで使われているようなSQLデータベースは柔軟性とスケーラビリティに欠けているため、20年前のコンファレンスで指摘された最大の問題点を解決できなかったのです。

**結論:夢のような未来のユースケースは今ではなくてはならない技術になりました。しかし、1998年当時の最大の課題は、レガシーベンダーにとって依然として克服の難しい問題となっています。

最近になって、最新のDAM技術がようやく、20年前の約束をかなえ始めました。スケーラブルなアーキテクチャを使って、多岐にわたるデジタルアセットを管理し、大きく複雑になるアセット、ますます複雑化するメタデータに対応しています。

最新のDAMアーキテクチャがもたらす無限のスケーラビリティについての詳細は、Nuxeoのベンチマークレポート「Nuxeoのスケーラビリティ」をお読みください。10億個以上のアセットでテストした結果をご覧いただけます。