最近、CMSWireの記事のための取材に応じて、コンテンツ管理の未来に関する一連の質問に答えました。CMSWireから聞かれた質問のひとつが、デジタルトランスフォーメーションに関するものでした。また、「ECMの時代は終わった」とするGartnerの主張についてどう思うかも尋ねられました。このやりとりを通じて、トランスフォーメーションについて、またレガシーのECM技術が今日の企業のニーズになぜ合わないかについて、考えさせられることになりました。
デジタルトランスフォーメーションか、最適化か
本題に入る前に、Gartnerが最近発表した調査結果に少し触れておきましょう。デジタル・ビジネス・トランスフォーメーションとデジタル・ビジネス最適化についての調査でした。Gartnerは、1枚の簡単なスライドで、デジタル最適化とデジタルトランスフォーメーションを明確に区別していました。前者は、既存の売り上げを守りつつ、生産性を高め、顧客体験を向上すること、後者は、新製品や新サービスを投入して新規事業を開拓し、場合によっては新しい事業モデルを導入することでもあるとされていました。
私が思うに、デジタルトランスフォーメーションという言葉はしばしば、最適化とトランスフォーメーションの両方を意味するものとして、ほぼ至るところで多用されています。私自身も、現時点ではそのように使っています。が、既存事業の新たな効率化を模索するのであれ、新しい製品や事業モデルを導入して抜本的な変革を模索するのであれ、コンテンツとコンテンツ管理は、このトランスフォーメーションを可能にするうえで重要な役割を果たします。
コンテンツとデジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーション(と最適化)におけるコンテンツの価値についても、少し触れておきましょう。第一に、CMSWireの記事で論じたとおり、コンテンツはデジタルな顧客体験を実現するうえで不可欠です。顧客とのインタラクションの多くは(特に金融サービスなどの業界で)、コンテンツに始まり、コンテンツに終わります。そして、この種のコンテンツ主体のインタラクションの多くが、有効なコンテンツ管理戦略を使うことで、合理化し、自動化し、場合によってはなくしてしまうこともできるのです。同様に、コンテンツ管理を実践すれば、重要な文書や伝達事項、その他の顧客向けコンテンツに対して、ユビキタスなマルチチャンネルのアクセスを提供することもできます。
コンテンツは生産性と効率を向上させます。正しい情報に簡単にアクセスできれば、意思決定をすばやく正確に行えるようになるからです。コンテンツはしばしば、ビジネスプロセスを支え、知識業務を推進します。また、コンテンツ自体が業務の成果物になることもあります。
しかし、コンテンツは、まったく新しい事業モデルの導入も可能にすることができるのです。ひとたび情報がデジタル化されれば、企業はこの情報をまったく新しいチャンネルで、まったく新しい消費者に向けて発信できるようになります。例えば、Nuxeoのある導入組織は、完全に紙をベースとした従来の事業モデルから新しいデジタルの事業モデルに移行し、今では売上高の80%をデジタルの事業モデルで計上するようになりました。Nuxeo(とコンテンツ管理)により、このトランスフォーメーションが可能になったのです。紙主体の事業としてこれまで集積してきたすべての重要な事業情報をどのようにパッケージ化して売り上げにつなげるかを、抜本的に考え直すことができたためでした。
レガシーのECMのアプローチが抱える課題
デジタルトランスフォーメーションのあらましは分かったとして、ここからはすべきでないことについてお話ししましょう。具体的には、たいていのレガシーECMスイートが直面している4つの課題を説明し、これらの課題がなぜ御社のデジタルトランスフォーメーション戦略に深刻な問題をもたらし得るかを考えていきます。
リポジトリが1つでソリューションはゼロ ― まず第一に、レガシーECMの多くが、1つのリポジトリを中心に据えて構築されています。うたい文句も非常に単純でした。お手持ちのコンテンツをすべてこちらのリポジトリに入れていただければ、当社が提供する様々なアプリケーションの力をすべて利用できるようになりますよ、というものです。しかし、実際にそのような使い方をする人はいません。これは、非常に高価で時間がかかり、しばしば低価値なコンテンツ管理のアプローチです。「すべてのコンテンツを我が社のプラットフォームに移行するのが唯一のオプションです」と言われた場合は、すぐさま走って(歩いてではありません)逃げ出すべきです。これには、クラウドオンリーの比較的新しいベンダーも含まれます。このアプローチが上手くいかない理由は、会社のプライマリ・コンテンツ・リポジトリには存在しない情報にアクセスする必要のある時というのが必ずあるからです。このため、移行以外のオプションがなければなりません。
スイートであってプラットフォームではない ― レガシーECMのもうひとつの問題は、プラットフォームとして構築されたわけではない点です。ほとんどの製品は、様々な買収資産を製品スイートとして統合して作られました。10年、15年前はそれで良かったのです。ユーザーがコンテンツにアクセスして作業する際に、そのベンダーの独自のアプリケーションを常に使用したからです。しかし今日では、ほとんどの顧客が、1つのコンテンツプラットフォームの様々な部分(マイクロサービス)を使用して、多数のアプリケーションやソリューションにわたるコンテンツを管理したいと考えています。多くのECMベンダーが抱えている問題は、主な機能の多くが、スイートを構成する様々なAPIの内側に今も閉じ込められていることです。
固定化したスキーマ、専有技術、複雑な実装 ― ここでは、これらの問題をすべてひとまとめにして取り上げます。なぜなら、結果的に同じことを意味するからです。レガシーのECMソリューションは、導入が非常に困難で時間がかかり、変更するとなるとなおさら難しくなることです。デジタルトランスフォーメーションとはプロセスであって、1回きりのイベントや再発明ではありません。企業はアジャイルな開発を可能にする新しい今時の技術を必要としています。おそらくもっと重要な点として、環境に常に適応して変化できるようにしてくれる技術を必要としています。より良い体験、新しい商品、新しいサービスを常に提供できるようにするためです。
ドキュメントでない場合はどうなるのか ― 昨今のデジタル世界においては、ドキュメントがすべてではありません。動画、音声、画像などの新しいコンテンツタイプは、ますます重要な情報源となり、現代のビジネスプロセスにとって不可欠な存在となっています。しかし、悲しいかな、ほとんどのレガシーECMプラットフォームは、これらのデジタル・コンテンツ・タイプが存在すらしなかった頃に開発されたため、動画のようなものを管理する基本的な機能すら欠いています。
「クラウド対応」の嘘 ― 前述の問題にも通じることですが、多くのレガシーECMソリューションは、クラウド時代に開発されたわけではありません。その結果、クラウド環境で動作するよう改良はされているものの、最近のクラウドネイティブのプラットフォームがもたらすような真のメリットはほとんど実現していません。スケールのプロセスが非効率であったり、なかには上手くいかないものもあります。パフォーマンスを実現するには、一般的でない高価なハードウェアが必要です。とどのつまり、ECMスイートを真のエンタープライズ・コンテンツ・プラットフォームとして動作させるには、大変な費用がかかるのです。
抜本的に異なるアプローチ
コンテンツサービスは、抜本的に異なるアプローチです。コンテンツ・サービス・プラットフォーム(CSP)は、そもそもシンプルな理念の下に作られています。コンテンツのタイプにかかわらず、またどこに保存されているかにも関係なく、CSPは、コンテンツを必要とするすべてのアプリケーション、プロセス、サービス、ソリューションに対して、あらゆるコンテンツへのアクセスを提供する、という理念です。結果として、コンテンツ・サービス・プラットフォームは、レガシーのECM製品が抱える大きな課題の多くに本来的に対応しているのです。コンテンツ・サービス・プラットフォームには、次のようなメリットがあります。
様々なシステムやコンテンツリポジトリに幅広く接続して、コンテンツをほぼどこにでも保存できるようにし、コンテンツ移行の必要性をなくします。 オープン標準と包括的なAPIに基づく統一的なアーキテクチャであるため、最近のあらゆるアプリケーションとの統合を容易にします。また、CSPは、まったくカスタマイズをしなくても最初から主だった業務アプリケーションや生産性アプリケーションに幅広く接続して、必要な場所へコンテンツを届けてくれます。
アジャイル開発とDevOpsをサポートし、コーディングのシンプルなプラットフォームであるため、コンテンツ主体のアプリケーションをすばやく構築して統合することができます。また、他のアプリケーションで簡単に使えるマイクロサービスも提供します。 動画、音声、その他の非テキストコンテンツなど、多岐にわたるコンテンツタイプを管理します。
*クラウドネイティブで、きわめて大きな会社のニーズにも対応して簡単に効率的にスケールすることができます。
デジタルトランスフォーメーションとは、究極的にはコンテンツサービスや技術全般以上のことを意味します。しかし、レガシーの技術投資がデジタルトランスフォーメーションを阻み、会社全体にデジタルハンディキャップを課してしまう可能性があるのです。
ですから、コンテンツを使って事業を改革しようと思うのであれば、昔ながらのレガシーECMのアプローチは取らないことです。今日の企業のニーズに応えてくれる今時のコンテンツ・サービス・プラットフォームを追求してください。