この質問に取り掛かる前に、一歩下がって、もう一つ別の質問、つまり「御社ではどのぐらいの量の重要なビジネス情報を管理していますか?」という質問の答えをまず考察する必要があります。
ほんの少し前までは、顧客との通信量(送受信)を調べるだけで、正当化可能な数値を得ることができました。メール室の業務内容をまとめた報告書を集計して受信メールの量を把握し、送信された印刷物およびメール(請求書、明細書、通知、書簡など)の量と足し合わせます。この計算によって、かなり正確な答えを得ることができました。
しかし時が経つに伴い、コンテンツの種類が増加するとともに、それらのコンテンツを格納するリポジトリの種類も増加してきています。郵便物にFAXの送受信が加わると、それに続いてメール、ウェブフォームが加わるなど、種類は増える一方です。今や私たちは、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、ファイル共有アプリケーションなど、あらゆる方向から寄せられる情報に対処するようになっています。Gartnerでは、「IoT」(モノのインターネット)に接続されたデバイスの数が2020年までに全世界で200億台を超えると予測しており、この値が2025年までに750億台にまで増加するとする意見もあります。
また、ここ数年間で、組織で管理する必要のある情報アセットの種類(音声/オーディオファイル、ビデオ、写真/画像など)も急増しています。それに加え、平均的なファイルサイズと全般的な情報格納量も増大し、ITインフラストラクチャにさらなる負担がかかるようになっています。今日、組織によって生成および利用される情報の量、範囲、そして全体としての大きさはとてつもないレベルに達しています。
ここでもう一度お尋ねします。御社ではどのぐらいの量の重要なビジネス情報を管理していますか?数万個のアセットですか?数十万個でしょうか?それとも数百万、あるいは数十億、それ以上でしょうか?そもそも、この値を算出することはできるのでしょうか?
良かれと思って行ったことがコンテンツのカオスを招くことがよくある
ひところは、「すべてのコンテンツを単一のデジタルアーカイブにまとめることができれば、コンテンツの管理が遂に可能になる」という説が有力でした。この説に基づいて、文書イメージングソリューションへの投資が始まり、文書管理システム、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)ソリューションがそれに続きました。また、応用性に欠けるポイントソリューションもいくつか選択されました。すると、組織内の他の部門も、その部門に固有のニーズを満たす専門的なファイル共有やネットワークドライブなどの、コンテンツ管理ソリューションが必要であると感じ始めました。そこで導入されたのが、SharePointなどのソリューションであり、企業の合併や買収を通じて統合されるソリューションもありました。
こうして今、私たちを取り巻く環境は非常に乱雑な状態となっており、あらゆるサイズと種類の情報が組織内に無秩序に分散されています。「環境を完全にコントロールできているから大丈夫」と自分に言い聞かせようとしますが、自分の組織がどのぐらいの量のどのような情報を、どこに保持しているのか、見当もつかないというのがほとんどの組織の本音です。わかっていることはただ一つ、互いに連携していない大量のコンテンツ管理システムを維持するために多額のコストがかかっており、このことが組織を重大なリスクにさらしているということだけです。
ここでもう一つ、別の問題についてお話ししましょう。つまり、互いに連携していないシステムやコンテンツリポジトリに格納された情報を検索・取得することが、極めて困難であり、最悪の場合は不可能であるということです。日々の業務を遂行するために必要な情報をどこで見つけられるかを完全に把握している社員は一人としていません。仮にそれがわかっていたとしても、それらのシステムに対するセキュリティアクセス権を与えられていない可能性が大です。さらに、情報の格納場所がわかっており、かつ、アクセス権を与えられていたとしても、システムの構成は特定のビジネスニーズや部門別要件を満たすようシステムごとに異なるため、何を検索すべきかわからない可能性があります。気が付かない場所に置かれた情報、アクセス不可能な情報、不要にレプリケートされた情報、情報サイロに閉じ込められた情報が山のようにあるというのが現状です。
これ以上事態が悪化することはないと思ったら大間違いです。これらの異種情報システムをビジネスアプリケーションに統合することを想像してみてください。情報システムのプログラミングインタフェースはそのシステムに独自のものである可能性が高く、期待を満たすレベルとは程遠い統合機能を構築するためだけに、固有のスキルセットが必要となるだけでなく、製品の内部機構に関する詳細な知識も求められます。
総入れ替えも、別のレガシーシステムでの置き換えもすべきではありません!
それではどうすればよいのでしょうか?総入れ替えのアプローチに、ミッションクリティカルなシステムから着手すべきでしょうか?このアプローチを選択する組織は、あえて難行苦行を好む組織でしょう。なぜならば、リスクとビジネスの混乱、高コストというマイナス要因を組織に招き、すでに好ましくなかった状況をさらに悪化させることになるからです。また、以前のシステムでコントロールしたと思っていた新しいセキュリティ上の脅威にさらされる可能性もあります。新システムへの移行に時間がかかることは言うまでもなく、場合によっては数年かかることもあります。
これを読んで皆さんは、「余計な手出しはしないのが一番だ」とか「壊れていないものを直す必要はないだろう」などと考えるかもしれません。でも、その考えは間違っています!現行のシステムは機能していません。その程度は甚大であり、このままでは、競合他社に差をつけられてから、いかにひどい状態であるかを思い知らされることになるでしょう。組織にとって、ビジネス情報(構造化データと非構造化コンテンツ)は生命線のような存在です。ビジネス情報なしでは、決定が下されず、たとえ下されたとしても、効果的な意思決定を期待することはできません。また、規制要件に従うことも、監査期限を遵守することもできません。ビジネス情報なしに、豊富な情報に基づくカスタマーエクスペリエンスは実現できません。組織の業務慣行を正当化することもできません。顧客を定着させることも、顧客内シェアや市場シェアを拡大することも不可能です。豊富な情報に基づくタッチポイントを活用して優れたカスタマーエクスペリエンスを実現し、より効果的かつ迅速に決定を下すために情報を活用できている競合他社やスタートアップ企業、斬新なライバル企業から見て、格好の餌食になってしまいます。つまり、一巻の終わりです。
明らかなことは、何か手を打たなければならないということです。たとえば、すでに導入されている画一的なレガシー情報管理製品を、別の画一的なレガシー情報管理製品で置き換えることを検討している組織について考えてみましょう。当然のことながら、「新しい」レガシーシステムの販売担当者は、このソリューションによって既存のシステムの欠点をすべて解決できると売り込んできます。行わなければならないことは、コンテンツを新しいシステムに移動することだけです。導入組織は、言われたとおりに新システムにコンテンツを移動します(あるいは、少なくともそれを試みます)が、数年後には、環境が再び乱雑になり、振り出しに戻ったことに気付きます。
情報システムモダナイゼーションへのインテリジェントなアプローチ
この問題に対する答えは、よりインテリジェントな方法でモダナイゼーションの取り組みにアプローチすること、つまり、既存の情報システムと接続するための骨組みとして機能する、モダンで適応性の高いプラットフォームを用いることです。
情報を「連携」させるには、情報がどこに置かれているかにかかわらず、企業内のあらゆる情報に対する単一アクセスポイントとして機能する、中央ハブ的なプラットフォームが必要です。
長年、情報管理業務に携わったことのある人ならば、「あらゆるビジネスニーズに対応する単一のリポジトリ」という約束がかなわぬ夢であったことをご存知でしょう。この考えはまったく非現実的であり、多くの場合、好ましいものでもありませんでした。率直なところ、組織内に導入されている様々なシステムに情報が拡散するのを阻止する方法はありません。ならば、それに逆らおうとするのではなく、それを受け入れて活用すべきではないでしょうか?
そのための第一歩は、今日の情報管理システムとレガシーシステムの両方に接続するための事前構築済みコネクタを豊富に備えたプラットフォームを選択することです。このプラットフォームは、非標準の情報ストアに対するコネクタもすばやく構築できるものでなければなりません。既存のレガシーシステム内に配置されたコンテンツにすばやく容易にアクセスできるようになると、数年分(あるいは数十年分)の貴重な情報をサイロから解放し、より迅速で効果的なビジネス上の意思決定に活用したり、カスタマーエクスペリエンスの向上に役立てたりすることが可能になります。
これらの高価値情報を連携させ、ユーザ、ビジネスアプリケーション、顧客からアクセスできるようにしたら、ステップ2に進むことができます。ステップ2では、ビジネス価値をもたらさなくなった、古くなったレガシーシステムと冗長なリポジトリの統合に着手します。ビジネスシステムは、接続レイヤ経由でアクセスする必要のある情報から分離されるようになったため、組織は、独自のペースで統合戦略を進めることができます。また、情報の移行をビッグバン方式で一括して行う必要がないため、業務の混乱を最小限に抑えることができます。
高リスクを伴う総入れ替えを試みるのではなく、既存のシステムをモダンなコンテンツサービスプラットフォームに接続することで、はるかに短期間でROIを達成できます。さらに、情報システムを統合することで、TCOを削減し、収益性の向上に結び付けることが可能です。このように、すべての面でメリットがもたらされます!
このような接続・統合機能を提供できると主張しているベンダーは少なくありません。ただし、レガシーベンダーは、「単一の画一的な製品ですべての問題を解決できる」と考えられていた時代に設計されたアーキテクチャをいまだに使用し続けています。これらのベンダーの画一的なアプローチでは、どのような変更も製品全体に影響する可能性があるため、極めてマイナーな変更にも大量の時間、コスト、リソースが必要となります。
モダンなプラットフォームアプローチでは、ソリューションをすばやく導入してビジネスアプリケーションと連携させることができ、ビジネスニーズや要求の変化に適応させることも容易です。つまり、より優れた選択肢が利用可能になったときに、個々の機能コンポーネントを置き換えることが可能であるという意味で、「将来においても有効な」情報管理環境を築くことにつながります。また、製品全体に変更を加えるのではなく、個々のサービスを置き換えるため、その影響を最小限に抑えることができます。さらに、プラットフォームがコンポーネントベースかつクラウドネイティブの場合、プラットフォームアーキテクチャの個々の要素をすばやく拡張できるため、製品全体を拡張する必要がありません。
Nuxeoは、情報システムモダナイゼーションをこの2ステップアプローチで進めるコンテンツサービスプラットフォームを提供しています。Nuxeoのオープンソースプラットフォームでは、APIでアクセスできる様々なサービスを利用して、重要なビジネス情報をその配置場所にかかわらず容易に活用することが可能です。これにより組織は、今日のみならず将来にわたってビジネスアプリケーションをサポートするうえで必要となる、豊富な情報に基づくタッチポイントを実現できます。
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