1990年代にBill Gatesが次のように述べたことは有名な話です。

バンキングは必要だが、銀行は必要ではない。

Bill Gatesとバンキング

当時、「顧客がいずれ、信頼を置く金融機関の実店舗を訪れなくなるであろう」というこの考えは、一笑に付されることがほとんどでした。しかし、Bill Gatesが言わんとしていたのは、銀行そのものが消え失せるということではなく、個人消費者とバンキング商品/サービスの関わり合い方が大きく変わった結果、物理的な銀行に足を運ばなくても金融取引を実行できるようになるということです

あれ以来、支払いから預金に至るまでのあらゆる取引を対象に、デジタルバンキングのカスタマーエクスペリエンスが広く普及するに伴い、Bill Gatesのビジョンの多くが現実のものとなりました。今日、デジタルバンキング(または「オープンバンキング」)は、顧客が金融機関とインタラクトする優先的な方法として選ばれるようになっています。

2015年には、モダン・デジタルバンキング時代にテクノロジー企業が世界中のリテールバンキング業界に及ぼす創造的破壊、つまりディスラプションについて説明した、James HaycockとShane Richmondの共著『Bye Bye Banks?』が出版されました。

二人の著者は次のように述べています。

新世代の企業とリーダーによって既存のルールが根底から覆され、新しいテクノロジーと業務慣行が採用されるとともに、顧客の生活がますます携帯電話を中心としたものになる中、企業を取り巻く競争環境は、元の姿に戻れないほどにここ数年で様変わりしている。

二人はさらに、今日の銀行が抱える問題は、レガシーテクノロジー、プロセス、考え方が「足かせ」となり、より敏捷で新しい非従来型の競合先のスピードについていくのがほぼ不可能になっていることであると指摘しています。体の重いゾウの動きがゆっくりなのと同じ原理です。

グローバルバンキング業界におけるデジタルディスラプション

HaycockとRichmondは、このディスラプションの3つのフェーズを次のように表現しています。

  • 「競合先に取って代わられる」
  • 「重要性が低くなる」
  • 「銀行離れが起きる」

HaycockとRichmondによる第1フェーズの説明は次のとおりです。

[銀行が競合先に取って代わられるとは、つまり、]日々のインタラクションの相手が、銀行所有のインタフェースではなく、より優れたエクスペリエンスと価格を提供するスタートアップに変わることを指す。

PSD2

「消費者の目」が新しい競合先に向けられるようになり、既存の銀行から提供されているものよりも迅速かつ安価な商品とサービスに注目が集まります。新しい業界ディスラプターが消費者の注目を独占するようになると、銀行の重要性は一気に低くなります。つまり、価格や利率に基づく比較購買が水面下で行われるようになり、銀行の「ユーティリティ化」が進みます。銀行との直接的なインタラクションがないと、消費者は商品やサービスをどこから購入すべきかをさほど気にせず、最も有利な利率や特典に魅力を感じるようになります。そしてついに、銀行離れが生じます。

新しい競合先は、消費者が銀行を必要としていないことを察すると、既存の銀行では太刀打ちできないような迅速さとデジタルアジリティ、そしてカスタマーエクスペリエンスを引っ提げて従来のバンキング商品やサービスを提供することにより、収益源の奪取を試みるようになります。

これら3つのディスラプティブ・フェーズの視点からリテールバンキング業界を見ると、この業界がまさにこの道をたどっており、ビジネスモデルの進化発展するペースが速まる一方であることがよくわかります。

このようにして今日に至っています。

PSD2の説明

2018年1月、改正版のEU決済サービス指令II(PSD2)が実施されました。このことは、EU圏の他の銀行組織と同様に、イギリスの大手銀行「ビッグ5」(Barclays、HSBC、Lloyds、Santander、Royal Bank of Scotland。5行合計のバンキング市場シェアは80%)にも多大な影響を及ぼしています。

PSD2には、ディスラプティブな条項が多数関連付けられています。手数料の一般開示を定めた条項はその一つですが、最もディスラプティブなものとしては、個人顧客からのリクエストと許可を得たうえで、オープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)経由で第三者に自社データを提供することを銀行に対して義務付けた要件が挙げられます。

PSD2が銀行に及ぼす影響とは

このことは、HaycockとRichmondの「競合先に取って代わられる」と「重要性が低くなる」のコンセプトを裏付けるとともに、新しい競合先が「アグリゲーター」として従来型の銀行に脅威を与えるきっかけとなっています。

金融機関ごとに別々のウェブサイトやモバイルアプリケーションを操作するのではなく、すべての情報をその保存場所にとらわれることなく一か所で確認できることに越したことはありません。また、より有利な利率や料金体系を、マウスをクリックするだけでアグリゲーターから利用できるとしたら、そのアグリゲーターに乗り換えない理由などありません。結局のところ、イギリスの銀行の平均ネット・プロモーター・スコアは15ポイントにすぎず、顧客ロイヤルティの向上に一役買うものではありません。つまり、既存の銀行は仕事の負担とリスクをすべて引き受けるにもかかわらず、何の報酬も得ることができない可能性があります。

情報システムをモダナイズして銀行離れを回避

それでは、銀行のどのような対応が銀行離れを招いたのでしょうか。PSD2は、銀行の顧客をめぐる新たな競合先であるAISP(口座情報サービスプロバイダ)とPSP(決済サービスプロバイダ)の二者について、規制の枠組みを整備しています。

銀行は、外部の競争によってディスラプトされるのではなく、これらの役割を担うことで、自らがディスラプターになることができます。

ただし、そのためには、銀行が迅速で敏捷であることが必要であり、何よりも重要なこととして顧客中心を実践しなければなりません。

残念なことに、今日銀行に導入されているレガシーシステムは、市場ダイナミクスの変化のスピードについていくのに必要なデジタルアジリティを欠き、変更や維持管理が困難で、時間とコストのかかる、画一的で静的なものがほとんどです。銀行がレガシーアプリケーションと旧態依然とした考えの束縛から自由になるには、商品/サービスを提供するための、よりスマートでモダンなアプローチが必要です。

老朽化した情報システムをモダナイズすることは、新しいオープンバンキング・スタンダードとPSD2をフルに活用するためだけでなく、カスタマーエクスペリエンスを最適化するためにも重要なステップです。レガシーシステムを基本的に同じだがアップデート版のシステムで総入れ替えするだけのアプローチは、もはや通用しなくなっています。銀行は、APIを介して公開される一連の堅牢なサービスに画一的なビジネスアプリケーションを分解するとともに、一つではなく複数のビジネスアプリケーションを再利用可能なサービスからすばやく組み立てることを可能にするプラットフォームでそれらのAPIを活用しなければなりません。

それこそが、従来とは異なる競合先のスピードとデジタルアジリティに対抗する唯一の方法です。

画一的な商品アプローチではなく、APIに基づくプラットフォームアプローチを採用すると、次のようなメリットが銀行にもたらされます。

  • PSD2の要件に対応:API第一のアプローチを採用することで、データおよび取引への相互運用可能なアクセスについて定めたPSD2条件に従えるようになります。
  • APIエコノミーを活用:APIエコノミーおよび一般に利用可能な数万個のAPIを活用できるようになります。すでに存在する機能や自社の強みに直結するとは限らない機能の構築に、貴重な時間、資金、リソースを投じる必要がなくなります。
  • APIエコノミーに参加:独自のAPIを市場に投入して収益化することができます。今日、SalesforceやExpediaなどの多数の組織がサードパーティ・プロバイダを通じてAPIを公開することで、多額の収益を生み出しています。
  • 開発チームの拡張:APIは自己完結型の機能ユニットであるため、単一の開発/保守チームに負担を集中させません。特定の機能を開発するのに最も適した専門知識を有する複数の部署にAPIの開発を分担させることが可能です。
  • 将来を見据えたビジネスアプリケーション:API経由で公開される独自のサービスに機能が分解されているため、新しいテクノロジーが利用可能になり次第、サービスの入れ替えをすばやく行うことができます。
  • テストと開発の迅速化:APIは独立したビジネスサービスを表しているため、サービスの一つが変更された場合は、そのサービスに関連した開発/テストだけを集中的に行えばよく、アプリケーションスタック全体の回帰テストを行う必要はありません。
  • パフォーマンスとスケーラビリティ:多くの場合、プラットフォームは、個々のコンポーネントを互いに独立させて拡張することが可能なアーキテクチャをベースとしています。計算能力や検索機能の強化、またはデータベースの拡大が必要な場合は、その特定のコンポーネントを拡張するだけでよく、アプリケーション全体を拡張する必要はありません。

銀行の未来を後押しするオープン・バンキングスタンダード

オープンバンキングとPSD2

銀行がポジティブなカスタマーエクスペリエンスをもたらせるかどうかは、その銀行がオープンスタンダードを活用し、いかにしてオープンバンキング環境を実現できるかにかかっており、ポジティブなカスタマーエクスペリエンスを実現することは、デジタルエコノミーにおいて勝者と敗者を分かつ決定要因となります。既存の銀行は、銀行に取って代わること、銀行の重要性を低くすること、銀行離れを起こすことを意図する非従来型の競合先との競争において、自分たちが不利な立場に置かれていると感じるかもしれませんが、明らかに有利な点もあります。たとえば、支払い、貯蓄、信用などに関する豊富な取引データを保有し、数十年にわたって築き上げてきた顧客関係があります。銀行が行うべきことは、ただ一つ。これらのデータを競争上の強みとして役立てられるよう、情報システムのモダナイゼーションにコミットすることです。

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