1. 情報管理の近代化なくして、デジタルトランスフォーメーションはあり得ません。
デジタルトランスフォーメーションの話題が巷に溢れかえっています。事実、あまりにも聞きすぎて耳にたこができたと感じていらっしゃる方もいるかもしれません。デジタルトランスフォーメーションをしようというのは、すばらしいアイデアです。私が億万長者になろうと思うのと同じぐらい、すばらしいアイデアと言えるでしょう。でも、どちらも現実から少し乖離しているかもしれません。
幸いなことに、デジタルトランスフォーメーションを実現するためのステップは、私が億万長者になるステップよりも、はるかに簡単です。第一のステップは、情報の管理方法を近代化することです。
AIIMの調査報告書「Every organization is on-or should be on-a Digital Transformation journey」(あらゆる組織が進めている、または進めているべきデジタルトランスフォーメーションの歩み)によると、回答企業の81%がデジタルトランスフォーメーションは重要だ(または非常に重要だ)と考えています。しかし、重要性を認識することから実際の計画へと移行するのが、難しい部分かもしれません。
とはいえ、ひとつ重要なのが、どんな企業であれデジタルトランスフォーメーションを実現したいと思うのであれば、近代的で信頼性の高いデジタル情報インフラが必要だということです。
その理由は単純です。社内に存在する情報を管理するに当たって、確固とした基礎がなければ、その上に乗せるプロセスをデジタル化することなど不可能だからです。社内にあるデータやコンテンツをすばやく見つけることができないのに、分析やAIの活用を期待できるわけがありません。それに、メタデータ(あるいは会社がコンテンツやデータを記述する際の何らかの方法)に一貫した構造がなければ、社内のコンプライアンスや情報ガバナンスがどんどん厄介になっていき、欠陥だらけで時間のかかる苦痛の作業になってしまうでしょう。
重要なのは、情報を管理するためのツールキットとインフラを近代化し て広範かつ確固たる基礎を築き、その上にデジタルトランスフォーメーションを実現することです。それがなければ、デジタルトランスフォーメーションは実現しません。
2. 情報管理の近代化なくして、魅力的なカスタマーエクスペリエンス(CX)は実現しません。
Digital Banking Reportsの調査報告書「2017 Retail Banking Trends and Predictions survey」(2017年リテールバンキングのトレンドと予測調査)では、グローバル・バンキング業界の最大手企業が認めている最大のトレンド(かつ戦略上の最優先課題)が、カスタマージャーニーの改善とポジティブなCXの提供だと報告されました。しかし、ほとんどの金融機関が少なくとも現時点では顧客の期待を満たしていないことは明らかです。報告書「Improving the Customer Experience in Banking」(銀行業界のカスタマーエクスペリエンスの向上)では、正式なCX計画を策定している金融機関が37%しかありませんでした。
これは、先ほどのデジタルトランスフォーメーションの話にとてもよく似ているように感じられます。そして、その理由は明らかです。基本的なCXを提供するためですら、すべてのタッチポイントで一貫性のある顧客情報を提供する必要があるからです。しかし、このシンプルな要件が、多くの企業にとって今も大問題であり続けています。様々な情報システムからの情報を統合できていないと答えた企業は79%に上りました。他の情報システムやデータリポジトリに接続してコンテンツの中央ハブとして機能する近代的でスケーラブルなプラットフォームがなければ、一貫したユーザエクスペリエンスを提供することは実際非常に難しくなります。
これは、今まで伝統的に実践されてきた情報管理方法が招いたよくある副作用です。異なるシステム(それぞれに独自のコンテンツリポジトリとデータリポジトリがある)が社内各所に導入されて、切れ切れで離れ離れ、かつコントロール不可能な方法でシステムが無秩序に拡大するという事態を招いてきました。
近代化するということは、多数の事業部門のシステムに標準的な接続をもたらし、また使われているコンテンツやファイルシステムにも標準を導入することによって、このカオスに秩序を取り戻すことを意味します。コンテンツとデータが社内のどこに保管されているかを把握したうえで、中央情報ハブとして機能することにより、これらを統合するのです。このハブは、情報にアクセスする共通の場所となるだけでなく、未来の社内ソリューションを構築し、究極的にすばらしいCXを提供するためのプラットフォームとなります。
3. CFOから大感謝されるでしょう。
情報管理のプロジェクトは、これまで一般に、社内のステークホルダーに賛同してもらうのが難しいプロジェクトでした。生産性が向上し、情報を探すのに費やす時間が短縮し、プロセスが合理化する。これらはすべて大きなメリットですが、しばしば説明が難しく、膨大なコストを伴うからです。
情報管理の近代化はそうではありません。
近代化は2段階で行われます。第一に接続、第二に整理統合です。どちらの段階にも、内容こそ異なれど価値の点では同等のメリットがあります。
接続フェーズでは、散らばった情報システムをすばやく統合することに集中します。完全に入れ替えるのではなく、すでにインストールされているシステムの価値を活かすのです。この結果、メリットが即座に実現します。検索時間の短縮でコストが削減され、囲い込まれていた情報にアクセスできるようになり、お供え物のように古くなっていたレガシーシステムをクラウド対応、モバイル対応に変えられるのです。これらはすべて、即効の投資リターンにつながります。
近代化の第二のフェーズは、整理統合です。社内の様々なデータシステムとコンテンツシステムを接続した後、古いシステムの一部は廃止できるようになる可能性が高いでしょう。これをする理由はいくつも考えられます。サポートが終了している、メンテナンス契約が高価である、特定のハードウェアを使用する、メンテナンスにスキルが必要である、などです。このような状況にあるシステムを廃止するのは、理にかなっています。しかし、これまでの「完全な入れ替え」のアプローチは、移行プロジェクトにかかわるシステムとスタッフに大きな負担をかけてきました。情報システムが(レガシーシステムも含めて)すでに接続されていれば、移行は継続的に(しかもバックグラウンドで)行うことができ、ユーザにとって完全に透明なプロセスになるうえ、会社の望むスケジュールで進めることができます。
このアプローチの長期的なメリットは、不要なシステムを廃止して、多大なリソースと予算を自由にできる可能性があるうえ、究極的に総所有コスト(TCO)を減らして収益に寄与できることです。