物事はタイミングがすべて。今の保険業界ほど、この格言が深長な意味を持つ場所はないかもしれません。保険の加入者は今や、オンラインショッピングのように便利で瞬間的な顧客体験(CX)を要求しています。その一方で、経験豊富なアジャスターが消えつつあります。

加えて、収益拡大と効率改善へのあくなき努力も続けられています。これらがすべて同時に起きることで、保険会社を不安にさせる「パーフェクトストーム」を生み出しつつあります。

まずは、組織的知識の消滅という問題を考えてみましょう。換言するならば、「保険業界のシルバー化」です。『Insurance Journal』によると、保険業界の労働者の半数は、2025年までに引退すると見られています。今からたった6年後です。

現時点で、保険業界の労働者の半数近くが45歳以上、請求担当者は70%が40歳以上です。保険会社は、長年かけて蓄積してきた組織的な知識とノウハウ、そして損害額を査定するクレームアジャスターの経験と勘による判断力に依存して、複雑な請求案件にかかわる大量の情報を処理し、手続きを行っています。これらの専門家は、保険請求詐欺を検出し、会社として用意しておくべき準備金の金額を決定し、損害額を見積もり、すべての請求が適切かつ効率良く処理されるようにしています。

しかし、この種の経験知が失われるにつれ、請求処理の品質は下がっていきます。細部がないがしろにされたり、詐欺請求が発見されずに通ってしまったり、調査事項が見過ごされたりするでしょう。これらはすべて、払うべきでない保険金を支払ってしまう事態につながります。

ストレート・スルー・プロセッシング(STP)は、もとは証券取引の自動決済を意味しましたが、これを保険業務に応用することで、貴重な知識を体系的に蓄積し始めることができるようになります。しかも、ビジネスルールや人工知能(AI)のアルゴリズムを追加すれば、知識を年々構築して、より良く、より速く、より一貫性の高い事業結果を出すと同時に、タッチポイントとコストを減らせるようになるでしょう。

##STPが実現するCXの向上
昨今の消費者は、保険会社と付き合うに当たって、お気に入りのオンラインストアでショッピングする際のように、便利ですばやく満足感の得られる体験を求めています。そして、このニーズが満たされないとなれば、保険契約をいつでも解約するつもりでいます。実際、ある調査では、保険請求の際の体験が気に入らなければ保険会社を切り替えると答えた回答者が83%に上りました。そのうえ、新しい技術を引っ提げたスタートアップ企業も山と控えていて、顧客を獲得しようと鵜の目鷹の目でいます。

米国の自動車保険請求のうち修理可能な物損の案件のみを対象にMcKinseyが行った調査では、顧客が満足するには次の5点が重要であると結論付けられました。
1.社員が丁寧で礼儀正しい
2.保険会社とのコミュニケーションが取りやすい
3.社員が知識豊富でプロフェッショナルである
4.プロセスが透明で簡単である
5.請求から支払いの受け取りまでが迅速である

従来の保険会社がこのような顧客の期待の高まりに応えて競争力を維持しようとするのであれば、スケーラブルな唯一の答えがSTPです。

保険会社のCX

保険会社は、フロントガラスの損傷や、レンタカーやレッカー費用の払い戻しに関する請求で、すでにSTPのメリットを味わってきました。今では、技術進歩が他の領域にも広がりつつあります。保険業界の未来をテーマにしたウェブサイト、Insurance Thought Leadershipの記事は、STPについて次のように説明しています。

AI分析が好結果をもたらしたことで次世代のSTPが後押しされ、最終的には機械学習などの進化も受けて、現在のフロントガラスやレッカー費用の請求に留まらず普及が拡大していくだろう。これもやはり、保険金支払いまでの時間短縮やクレームアジャスターの関与をほとんどあるいはまったく必要としない業務体制を実現する。誰にとっても好ましい「ウィンウィン」だ。

##人間のタッチポイントとコストの削減
STPは、人間の請求担当者の関与によって最終的な結果が影響されない請求案件において、特に効果的です。人間のタッチポイントを減らす、あるいはなくすことで、保険会社は、全体的なコストを削減でき、その分のリソースを、人身事故のように複雑な請求案件に費やせるようになります。McKinseyでは、デジタルのセルフサービス機能とSTPを導入してコールセンターへの問い合わせ件数を減らすことで、保険会社は業務効率を30%高められると見積もっています。

また、E&Yは、今日の顧客が期待する請求体験にとって「スピード、効率、透明性」が欠かせない特徴だとしました。請求にSTPを導入して業務品質を高めたいと考える保険会社にとって、優れたデータの活用法は以下のように多数存在しています。

  • 履歴データを使用して、査定にかかる時間を削減し、コストと修理品質を管理する。
  • 高度な通信システムを整備して、事故データをすばやく収集し、クラウドからダウンロードできるようにして、損害報告の初期通知を自動的に開始する(保険会社はこのデータにスコアを付け、損害の程度を車両の価値に比較することができる)。
  • ドローンと衛星画像を使用して、住宅被害の状況を調査し、損害情報を収集して、住宅オーナーが保険会社に連絡してくるよりも前に、請求のプロセスを開始する。
  • 請求者がスマホのアプリで損害状況の写真を保険会社に直接送信できるようにする。
  • AIを使用して保険請求詐欺の可能性を調べ、リスクと金額が一定範囲内に収まる案件に対しては、ロボティクスによるプロセスで自動的に保険金を支払う。

E&Yの報告書は、次のように結論付けています。

質の高い請求体験は、即座に利益をもたらす。請求ライフサイクルのキーポイントすべてにおいて、保険会社は顧客のニーズを見越して連絡し、正確かつ一貫性のある情報をタイミング良く、分かりやすく提供することができる。同時に、請求担当チームは、価値の高いインタラクションやリスクの高い請求、その他の例外的な案件に集中できるようになる。

収益拡大と優れたCXに対する期待の高まり、さらに人材面の危機が、保険会社に大きな圧力をかけるようになっています。そこで保険会社は、今日の消費者が期待するリテール体験を実現し、業績を犠牲にすることなくプロセス全体を加速するための唯一のスケーラブルな方法として、STPをとらえていかなければならないでしょう。

Nuxeoは、来週(6月5日、6日)シカゴで開かれる保険業界の会議「[Connected Claims USA Summit 2019]」を後援しています。来場される方は、ぜひ弊社のブース(414番)にもお立ち寄りください。Nuxeoの技術が保険会社の請求管理プロセスでどのように役立つかを実演させていただきます。

シカゴの「Connected Claims」

業績を犠牲にせず顧客の要求を満たす手段としてストレート・スルー・クレーム・プロセッシングをなぜ検討すべきなのか、その理由をこちらの説明書でも解説しています。