「情報システムを移行すべきかどうか」は、経験豊富な多くのIT担当者とビジネス担当者をおびえさせる決断の一つです。数か月に及ぶ計画と準備から生じる圧力とストレスを耐え忍んだことのある人なら誰でもわかるとおり、これほど大規模で重要なプロジェクトのスイッチを入れる日がきたときの不安感は計り知れません。頭の中で終末的なシナリオばかりが渦巻くようになります。明らかな見落としをしていないだろうか?これを行うことによって、何か予想外のものに悪影響が及ばないだろうか?このロールバック戦略によって本当に実行環境を元通りに戻せるだろうか?何か問題が生じた場合、どのぐらいの期間にわたって事業が停止し、何人のユーザと顧客が影響を受けるか?
こうした自己不信はやがて、「移行する必要が本当にあるだろうか?」という自問につながることが少なくありません。
この問いに対する答えは「はい」であり、情報システムのモダナイズが強く求められていることは確かです。しかし喜ばしいことに、今までよりもスマートで混乱の少ない方法でデータを移行する方法があります。
このデジタル時代に、何もしないことや、情報システムモダナイゼーションの取り組みにつきものの移行を遅らせることは、もはや選択肢ではありません。より柔軟かつ俊敏に新しい製品やサービスを提供できる、従来型および非従来型競合企業の市場参入がますます進む中、組織は今、老朽化したITインフラストラクチャを更新することを余儀なくされています。これを行うことは、今日の顧客のカスタマーエクスペリエンスに対する期待を満たすうえで必要であり、豊富な情報に基づくタッチポイントを提供する能力に優れた、Google、Facebook、Amazon、Appleなどの組織の主導によって進められています。
デジタル通の今日の消費者は、カスタマーエクスペリエンスの期待事項をもはや業種ごとに区別しません。ある業種で卓越したカスタマーエクスペリエンスが実現すると、それと同じレベルのエクスペリエンスがどの業種でも期待されるようになります。
変化は確実に、しかも急速に起きており、それを避けることはできません。変化に適応せず進化しない組織は、市場シェアと顧客内シェアを失う危険にさらされるだけでなく、柔軟性とデジタルアジリティが成功のカギであることをすでに理解している組織の影響で妥当性を失う可能性もあります。ただし、今日導入されている融通の利かない情報システムは、ビジネスダイナミクスや消費者の期待事項の変化に迅速に適応するよう設計されていないため、リプレースしなければなりません。
システム移行の計画時にあらゆる組織が検討する必要のある7つのリスク
システム移行はコストと時間がかかり、大量のリソースを消費するほか、リスクを伴うことも少なくありません。あらゆる移行プロジェクトに際して着目すべき7つのリスクは次のとおりです。
1.データ価値の低下
情報システム移行プロジェクトには、何十年も格納またはアーカイブされていた可能性のあるデータと情報を伴うものが多々あります。ビジネスが進化するのと同様に、ビジネスデータの価値も進化します。10年前に有効であった情報が今日も有効であるとは限りません。たとえば、今日使用している社内書式とそれに関連付けられた書式番号を考えてみてください。過去に使用していた書式の多くが今日もはや使用されなくなっている可能性が大いにあります。何らかのデータ検証・クレンジングプロセスを移行に組み込んでいない場合、もはや有効でない書式番号は新しいシステムでどのように処理されるでしょうか?使用されなくなった書式番号が移行の途中で見つかったら、どうすべきでしょうか?
2.セキュリティ
既存の情報システムは長年にわたって変更されているため、セキュリティの問題が特定されるたびに、つぎはぎ状に修正されていることがよくあります。これらのセキュリティリスクは、以前に見落とされたため、または綿密に文書化されなかったために再び発生する可能性が極めて高く、このことは、移行プロジェクトの成功と妥当性に疑義を生じさせかねません。
3.ロールアウト戦略
昨今、完全なシステム移行が一晩で、または土日の二日間で行われることはめったにありません。移行が一定の期間にわたって五月雨式に行われる場合は、事業の混乱を最小限に抑えて移行を進める方法の計画を慎重に検討する必要があります。移行が全社規模ではなく、ある事業部門が古いシステムを使用し、別の事業部門が新しいシステムを使用している場合、事業部門は互いにどのようにやり取りすべきでしょうか?
4.ロールバック戦略
詩人ロバート・バーンズの言葉を言い換えると、「ねずみでも人間の場合でも、非常によくできた目論見がはずれることがしばしばあります」。つまり、どれだけ慎重に移行の計画を立てたとしても、物事が計画どおりに進まなかった場合のためのロールバック戦略がどの組織にも必要です。ロールバック戦略には、移行そのものと同様の思考と計画が必要ですが、ロールバック戦略が成功するという保証はありません。移行の試行後にシステムを現在の状態に戻すことは、可動部の数の多さゆえに、いかによく見ても問題含みでした。
5.アプリケーション依存関係
古くなった情報システムを移行する場合は、そのシステムと連携しているアプリケーション、またはそのシステムによって作成・維持されている情報およびデータを追跡管理できていない可能性があります。移行イニシアチブの結果、ミッションクリティカルな端末システムを根本的に壊してしまったことに気付くことほどがっかりすることはありません。
6.ユーザ向けトレーニング
システム移行の結果、ユーザによる情報のアクセス方法が変わるだけでなく、ユーザの仕事のやり方も変わることがよくあります。これにはトレーニングが必要です。社員が新しいシステムを使用した職務遂行方法を学習できるよう、生産性の高い作業から別の作業に社員を向け直す必要があります。社員をトレーニングのためにその主要担当業務から遠ざけると、事業に混乱が生じる可能性があります。また、移行の規模と社員向けトレーニングの迅速性によっては、新しいシステムが特定の事業部門に導入されるまでに、社員がトレーニング内容を忘れてしまう可能性があります。
7.変化に対する抵抗
上記のことはいずれも、変化に対する抵抗につながります。ユーザがパフォーマンスの期待事項を満たすことに対する圧力を感じているか、既存の仕事のやり方に固執しているため、手続きを省略し、移行のメリットを台無しにする可能性があります。
コンテンツサービスプラットフォーム:よりスマートな移行アプローチ
移行プロジェクトの落とし穴を避けるには、情報システムモダナイゼーションという目標を達成するための、より効果的でスマートな方法を見つける必要があります。従来型の情報システム移行には、レガシーシステムを別のシステムで総入れ替えする作業が伴います。これよりもスマートなアプローチは、単一のアクセスポイントを通じて既存の情報システムを接続し、情報を現在の場所に残したままにすることです。つまり、業務システムとITシステムに認識させる必要があるのは、単一のインタフェースと通信する方法だけです。このインタフェースは、それよりも下位にある各情報システムとの通信方法を認識しています。これにより、接続された各システムの変更から業務を遮断することが可能になり、IT部門は、時間、予算、リソースの使用可能状況に適したペースで、システムの移行または統合を進められるようになります。
Nuxeoでは、この手法を「接続して統合」と呼んでおり、情報システム移行に関連した従来の課題を解決する、よりモダンで混乱の少ないアプローチであると考えています。
情報システム移行の負担を市場トップレベルの最新のコンテンツサービスプラットフォーム(CSP)で解消する方法を、ぜひご確認ください。