銀行の内部組織であるテクニカルチームは、自社製ソリューションの開発を数か月ほど進めた後、この作業にあまりにも時間とコストがかかり、複雑度が高すぎることを思い知らされました。そこで、Nuxeoに助けを求めることにしました。

複数のシステムに分散した数十億件のドキュメント

世界各地に数百拠点の支店と2万人以上の従業員を抱える同銀行は、1,400万人以上のアクティブな顧客のニーズを満たすという高度な要求を突きつけられていました。同銀行では、ドキュメント数にして推定25億件以上という膨大な量の顧客情報(契約、口座明細書、メール、SMSメッセージなど)が生成されていました。問題の1つは、これらのドキュメントの多くが、複数のシステムや部門の様々なコンテンツ管理プラットフォーム上に重複して格納されていることでした。また、同銀行が急成長を遂げていることも、この問題をさらに悪化させる原因となっていました。

従来のレガシーコンテンツ管理システムでは、増加するドキュメントや同時ユーザを、信頼性の高い方法で管理することはもはや不可能でした。拡張性に優れたプラットフォームを活用して、将来を見据えたビジネスを確立することにより、サイロ間で情報を接続し、「信頼できる唯一の情報源」を提供できるようにすることが必要でした。

最初は、別のコンテンツ管理システムを社内で構築しようと試みましたが、知識不足であったこと、また、優先順位がシフトしたことにより、コストがうなぎ上りになり、遅延が継続的に生じる事態に陥りました。銀行の幹部はすぐに、このアプローチが通用しないことを悟り、Nuxeoのコンテンツサービスプラットフォーム(CSP)に目を向けるようになりました。

Nuxeo:ドキュメントの移行とコンプライアンスのためのアジャイルアプローチ

同銀行は、Nuxeo Platformを選ぶ前に、AlfrescoやSharepoint、レガシーのエンタープライズコンテンツ管理(ECM)システムをはじめとした選択肢をいくつか検討しました。検討を重ねた結果、最終的に、その柔軟なメタデータモデルによって25億件以上のレガシードキュメントをプラットフォームに迅速かつ容易に移行できるNuxeoを選択しました。NuxeoのAPIを活用すると、既存のユーザインタフェースとシームレスに接続し、優れた顧客エクスペリエンスを実現して、競争上の差別化を維持することも可能になりました。

また、Nuxeo Platformのおかげで、ますます厳格化するGDPRなどの規制要件を満たすこともできます。新しい規則には、投資家を保護し、財務安定性と説明責任、透明性を確保することを目的とした、監査およびセキュリティ規制が含まれます。金融サービス業界の組織は今、たとえば重要な記録と情報を指定された期間にわたって保存することを義務付けられており、これを行わなかった場合、多額の罰金や罰則を科されます。また、個人情報の開示請求(SAR)に速やかに応じることも義務付けられています。

同銀行がこれらの要件を満たし、罰則を回避するには、情報管理システムおよびプロセスを合理化し、信頼性の高い監査システムを構築して、請求を追跡したり、包括的なSARレポートを配布したりできるようにする必要がありました。

Nuxeoを選んだ際に考慮したもう一つの重要な事項は、Nuxeoチームの対応力です。同銀行がNuxeoと連絡を取り始めると、プロジェクトの早期段階の質問に対する詳細な答えをはじめ、問い合わせに対する回答をただちに受けることができます。経験豊富で対応の優れたチームが、「スタートアップ企業」ならではのスピードとエンタープライズレベルのスキルを兼ね備えていることは、同銀行がテクノロジーベンダーとしてNuxeoを選ぶ決め手となりました。

しかし、最大の決め手となったのは、Nuxeoの先進的なオープンソースプラットフォームです。このプラットフォームによって銀行のテクニカルチームは、新しいアプリケーションの開発と導入を以前よりも俊敏に行えるようになります。同銀行は、デジタルトランスフォーメーションを後押しするソリューションを必要としていましたが、レガシーのECMソリューションでは目標を達成できないことにすぐに気付きました。

自動化されたプロセスとスマートコンテンツ管理の未来

同銀行は今日、情報管理、セキュリティ、顧客データプライバシーに関連した課題に対処するためのツールとして、Nuxeoを主に使用しています。Nuxeo Platformは、様々な種類のシステムとリポジトリに置かれたコンテンツに対する広範な接続機能をもたらします。このプラットフォームの基盤となっているクラウドネイティブアーキテクチャは、どこにでもすぐに導入し、効率的に拡張することが可能です。また、テキストと非テキスト(オーディオやビデオなど)の両方のコンテンツタイプを管理する堅牢な機能も用意されています。

同銀行は今後を見据え、Nuxeoのインテリジェントなコンテンツ管理機能に基づく拡張版のマッピング機能を備えた、新しいアプリケーションの開発を進めています。顧客は、口座明細をモバイルデバイスで確認できるようになります。また、関連するすべてのデータがシステムによって自動的に取得され、ユーザごとにカスタマイズされた方法で表示されます。同銀行は、ドキュメント以外にも、識別機能の拡張に取り組んでおり、顧客はパスポートや運転免許証、公共料金請求書等のスナップショットをアップロードするだけで、自分の個人情報をすべて銀行の全システムにわたって自動的に更新できるようになります。

コンテンツ管理につきものの主な課題の一つに、コンテンツの追加に大量の労力が必要となることが挙げられます。それを踏まえNuxeoは、人工知能(AI)テクノロジーを活用し、メタデータ抽出のためのトレーニング可能なエンジンを開発できるよう、同銀行との共同作業を間もなく開始する予定です。メタデータをコンテンツに適用することで、新しいコンテンツをシステムに追加するプロセスの自動化に着手できます。

今日の金融サービス業界で競争力を維持することは決して容易ではありません。しかし同銀行は、Nuxeoのおかげで、新時代の顧客およびビジネス要求を満たすのに必要な次世代コンテンツプラットフォームの開発において、ついに転機に差し掛かっています。Nuxeoが提供する基盤テクノロジーによって、同銀行は様々なハードルを克服し、運用効率を高めて、革新的なサービスおよび製品を提供するために必要なスピード、俊敏性、柔軟性を手に入れることが可能になり、最終的には、今日だけでなく将来的にも長きにわたって成長を続けられるようになります。